最近、高利回りの物件が少ないなぁ… 物件を探しながらそう嘆く投資家さんも少なくないでしょう。楽待や健美家に掲載されている情報に限らず、レインズに掲載されている物件を見ても、高利回り物件はほんの一握り。利回り20%超の物件に出会うことは非常にまれで、15%の物件を目にすることも少なくなりました。高利回り物件が少なくなってしまった原因、それは不動産価格の上昇にあります。7-8年ほど前に底値だった不動産価格はその後上昇に転じ、東京都心部の地価に関しては、バブル期をもしのぐ水準に!5年という比較的短い期間起きたこの変化によって、高利回り物件は一気に姿を消すことになります。
その一方で、この期間ずっと低水準で推移してきたもの、それが金利です。不動産価格が高騰を始める前からすでに低水準だった金利は、その後さらに下がり続けます。そして今の金利は史上最低。住宅ローンにあっては、変動金利で0.5%以下というものも珍しくありません。そして低金利の恩恵は、もちろんアパートローンを始めとするプロパーローンにも。この低金利に着目すれば、不動産投資始めるなら今!このように考えることもできます。
こうしたケースでよく用いられるのが、イールドギャップです。ネットで調べてみると、イールドギャップとは表面利回りと借入金利の差であると説明されています。イールドギャップは7%が合格点!そのようなことが言われたりもしますが、本当にそうなのか?上記定義に従って算出するとイールドギャップが8%(合格点)となる、下記物件を例に考えてみましょう。
・物件価格:5000万円
・年間家賃収入:500万円(表面利回り10%)
・借入金額:4000万円
・金利:2%
・返済期間:10年
空室率と運営費を共に10%とすると、上記不動産が生み出す純収益(NOI)は、次のようになります。
NOI=500万円-500万円×10%-500万円×10%=300万円
借入金額と金利、返済期間から、元利均等返済の場合の年間元利返済額を計算すると、約442万円。つまり、税引き前キャッシュフローは300万円-442万円=142万円のマイナスとなり、返済のために貯金を取り崩さなければなりません。
合格点とされるイールドギャップ8%の物件なのに、どうしてキャッシュフローがマイナスになってしまうのか?それは、最初にお伝えしたイールドギャップの定義には、返済期間という要素が加味されていないためです。
では、より実際的なイールドギャップは、どにょうにして導き出せばよいのでしょう。そこで重要となるのがローン定数なるもの。ローン定数とは、借入金額に対する年間元利返済額の割合のことで、次の式で表すことができます。
ローン定数K(%)=年間元利返済額÷借入金額
そして、表面利回りから借入金利ではなく、このローン定数を控除した値(%)こそが、より実際に近いイールドギャップということができます。
この定義に従って上記物件のイールドギャップを算出してみると、次のようになります。
イールドギャップ=10%-(442万円÷4000万円)×100%=-1.05%
このようにイールドギャップはマイナスとなってしまいます。ところが、他の条件を変えずに返済期間を25年に伸ばせたとすると、イールドギャップは次のようになります。
イールドギャップ=10%-(203万円÷4000万円)×100%=4.925
このような結果となり、イールドギャップは劇的に向上することとなります。
目安は2-3%のイールドギャップが確保できる物件を選ぶこと。それが5%以上であれば理想的だといえます。それが達成できない物件であれば、購入を諦めるか、より多くの自己資金を投入したり借入期間を伸ばしたりするなど、ローン定数を低く抑える工夫が必要になります。