格差社会といわれるようになって久しいですが、その格差が不動産の世界にも影を落としつつあることをご存知でしょうか?今回は、不動産市場における格差について考えてみたいと思います。
日本の人口がピークを迎えたのは2008年のこと。それ以降、日本の人口は減少の一途をたどり、平成31年2月の人口は1億2631万人。前年比で29万9千人、率にして0.24%の減少となりました。ピーク時の1億2808万人と比べて、実に177万人、1.38%の減少ということになります。今後もこの人口減少に歯止めが掛かることはなく、平成60年(2048年)には1億人を割り込むとの試算も。
人口減少が進むにつれて顕在化しているのが、日本の空き家問題です。平成30年10月の速報値では、日本における空き家の数は846万戸。平成25年からの5年間で26万戸増えたことになります。このように空き家が増え続けている一方で、多くの新築住宅が供給され続けるといった矛盾した現象が起こっているのは、皆さんもご存知のとおり。そのような供給過多に陥ってしまっている日本の住宅市場は、今後3つのグループに分かれると予想されています。
1. 現在の価値を維持、または現在よりも価値の向上が期待できる(10 - 15%)
2. 徐々に価値が落ちていく(70%)
3. 価値がゼロ又はマイナス(15 - 20%)
3番目の「価値がゼロ又はマイナス」という不動産は、タダ又はお金を支払わない限り譲渡先が見つからない不動産を指します。そんな恐ろしい時代が本当に来るのか?
1に分類される不動産の多くは東京・名古屋・大阪の3大都市圏と大都市に存在する一方で、地方都市にはほとんど存在しません。不動産市場には、このように地域間格差が生まれ始めているのです。そんな中でも有望なのは、やはり東京の不動産。先日の国税庁によって路線価が発表されましたが、東京の最高地点は銀座5丁目鳩居堂前、その額はなんと4560万円。バブル期の水準を大きく超える額となっています。それに対して、大阪の最高地点の路線価は1600万円と、バブル期の半額程度までにしか回復していません。このような状況が、東京の不動産への関心がいかに高いかを物語っています。
地域間での格差があらわになりつつあるとともに、地域内でも格差が生じようとしています。多くの自治体は財政難に直面している中、従来通りの行政サービスを維持することが難しくなってきている自治体も。中には行政サービスを提供する地域を限定するために、居住誘導区域を設ける試みが始まめられている自治体も。居住誘導区域に指定した行政サービスを限定することで、他の集中的にサービスが提供される特定の地域に住民を誘導しようというもの。特定の地域のみにリソースを割けばよいので、コスト削減につながるというわけです。
このようなことが起こると、居住誘導区域に指定された地域に存在する不動産の資産価値は下がってしまいます。このような地域の不動産を掴まないようにするには、やはり事前の調査が大切ということですね。