カテゴリ:大家
2019-07-24
神奈川県相模原市中央区淵野辺… この地名を聞いてもピンとこない人は多いことでしょう。私自身もその一人。聞き覚えはあるものの、実際に訪れたことはありません。ところで、なぜその地名を知っているのか?それは、投資物件がよく売りに出される場所だから。とはいっても、それらの物件が私の検討対象となったことは、ただの一度もありません。そんな私の淵野辺に対するイメージを一変させる、とても興味深いお話を聞いて来ました。
空室率がひときわ高い相模原の中でも、特に空室率が高いことで知られる淵野辺。そんな淵野辺を対象エリアとする不動産管理会社があります。その名は有限会社東郊住宅社。この会社が管理する物件の入居率は、なんと98.5%とのこと。平均空室率が30%を超える当エリアにおいては驚異的な数字といえるでしょう。なぜこれほどの高稼働率を維持できるのか?それは「トーコーキッチン」という食堂にあり。
東郊住宅社代表取締役の池田氏が事業を引き継いだ当時、大学が多い淵野辺では、入居希望者からの要望が多かった賃貸物件が食事付きの下宿タイプへと移行、入居者獲得にしのぎを削っていたとのこと。ところが、東郊住宅社が管理する物件のオーナーさんにはその資力がありませんでした。無いものは作ってしまえ!ということで、池田社長は、管理物件の入居者なら誰でも利用できる食堂を作ることを思いつきます。しかも、朝100円、昼と夜は500円という超低価格での提供とくれば、入居者の多くを占める学生が喜ぶのは間違いありません。
面白いのは、自分の部屋とトーコーキッチンの鍵が共通だということ。東郊住宅社が管理する物件は全てカードキーにて施錠と解錠をする仕組みになっていて、トーコーキッチンに入店するにはそのカードキーが必要なんです。つまり、一般の人は入れないのですが、初めての人は入れてもらえるとのこと。そして、次からはカードキーを持っている人を見つけて一緒に来るようにと、説明を受けるのだそうです。一度訪れたことのあるお客は、もう一度トーコーキッチンに行きたくなる。そしてカードキーを持っている友達が一人いれば、その人と一緒にトーコーキッチンが利用できる!カードキーを持っている学生は大人気に。一説には、東郊住宅社の管理物件に住む学生は「勝ち組」と呼ばれているのだとか。
トーコーキッチンを作ったことで、東郊住宅社にとってもメリットがあります。1人の入居者が何人もの見込み客を連れてきてくれて、その中から管理物件の入居者が生まれ、管理物件の稼働率を高い水準で維持、管理の依頼も増えるという良い流れが出来上がりました。投資は必要だったものの、損して得を取る作戦が見事に成功したわけです。近い将来、トーコーキッチンがどのような場所なのか、街の中でどのような役割を果たしているのか、見学に訪れてみようと思っています。